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世界遺産 知床

2011年

世界遺産の知床。知床五湖にバリアフリー高架木道が完成した。駐車場代は410円。入場は無料。総延長800メートル。往復すれば1600メートル。5月下旬の訪問。気温8度と寒かった。 

素晴らしい大自然。火山地形で出来た湖や湿地の上を、蛇行しながら木道は続いている。傾斜を緩くするために、真っ直ぐでないのだが、それでも起伏のある木道となっている。10度を超えるような強い傾斜はないため、体力測定を兼ねて全部一人で車いすをこいだ。いい運動になった。車いすをこぐのが大変な人なら誰かに押してもらえばいいだろう。

知床連山の山並みが素晴らしい。空気もきれい。木道は手すりが高く安全第一の構造となっていた。車いすの高さからも景色が見やすいように手すり上部の空間を拡げる工夫がされており、とても嬉しい。

展望台は3つある。一番奥が、第一湖。道中には野生のエゾ鹿がたくさん見られる。野鳥も多数。熊は残念ながら森の中にいるそうで、木道から見られることはないらしい。熊に襲われないために、安全に散策できるために、この木道は作られました。

ビジターセンターに掲げられていた案内板。地上遊歩道は、2011年から有料(5000円)となり、ガイド付きのツアーでしか入場できないようになりました。自然の山道、森の道なので、車いすはNGです。こればっかりは仕方ありません。バリアフリーうんぬんではなく、向き、不向き。それでも高架木道のおかげで、誰もが簡単に散策できるようになりました。素晴らしいですね。

完璧な高架木道ですが、その建設費は8億円といわれます。総延長800メートルなので、1メートル100万円の建設費となります。施設は良いのだけど、多額の建設費はどうなのか。。。

インディペンデンス・ボードウォークなら、10分の1以下の建設費なのですが、知床の場合は、高架であること、電熱線などの設備があること、ヘリコプターでの資材運搬など、特殊事情がありました。難しい問題ですね。


知床観光のもう一つの目玉は、遊覧船(あるいはクルーズ)。ヒグマが見られるルシャのコースが人気となっている。残念なのは、観光情報などで、一切のバリアフリー情報がないこと。書いてないこと=NG。バリアフリーでないことを言うのは難しくても、船の写真とか、船着場の様子とか、利用者が判断できる材料をホームページで載せてくれれば嬉しいのですけど。

船の場合、潮位が変わるため、乗場はスロープとかになっていることが多いのですが、知床の遊覧船「おーろら」は、乗場が2階で階段のみ。自力歩行ができなければ非常に利用が難しいです。船の構造上の問題ですが、港にバリアフリーの乗降場を作れば解決できそうです。残念。


(ベリーズの港で見た乗場を段差解消するスロープ)

一方、クルーズ船は、港に横付けされ、垂直移動が少なく、乗りやすいかもしれません。車いすで乗り込むことは難しいため、船員や周りの人に担がれて、船の中に入ることになるでしょう。「手伝うよ」「手助けします」と、言われましたが、2日とも天候が悪かったため、私は遊覧船もクルーズ船にも乗りませんでした。


知床といえば、滝も有名です。オロンシコン滝(下写真)は道路からも見えます。階段がありますが、階段を上っても、上らなくても、ほとんど変わりません。フレペの滝への遊歩道は、往復2キロ。車いす、ベビーカーの通行は不可能。舗装などの整備がされていないのが理由。全ては無理でも、平坦な土道が多く、少しは歩けそうな感じがしますが、規則として不可能で残念。
夏に開通する、カムイワッカの滝は、山道なのでもちろん車いすは不可能です。


宿泊したのは、ホテル知床。いわゆるバリアフリールームはありませんが、私にとっては充分なバリアフリー設備。館内に段差なし。車いすトイレも少なくとも3つあり。値段も1泊2食で8650円と経済的。大きなホテルで観光案内、食事、土産、大浴場、なんでもござれ。

洋室がとても広いので快適でした。部屋のバスルームは段差で利用できませんが、何の問題もなし。写真のトイレは、一般トイレの奥にある一つの洋式便座が、扉が広くて利用可能にしている例。

大浴場のアクセスは段差なし。脱衣場にはスロープ。ただし風呂へは、12センチの段差。手すりなどあれば、私一人で上れますが、持つところがないため、他の宿泊客に声をかけて、押してもらいました。風呂にはシャワーチェアーもあり、露天風呂へは段差なし。しかも広くて開放的。何より泉質がとても良かった。5つ星。


知床を廻るには、レンタカーが必要です。手で運転できる手動装置がついたレンタカー会社「ユニバーサルレンタカー」があるので借りました。手頃な価格です。後がガバッと開いて、車いすのまま乗ることもできるようにもなっていました。介護車両としても活躍中。沖縄にも1軒あるのを知っていますが、もっとこのような自動車が増えると、旅行の幅が拡がります。
広い北海道の道を走るのは楽しいですよ。