飛行機の登場拒否についての考察

2000/11


アリタリア航空の事例から


■車イス一人では飛行機に乗せれない!

2000年の年末ローマに行く計画を建てた。ローマ留学している友人訪問、ローマっ子アレッサンドロとの再会、サッカー観戦、ミレニアムクリスマスをどこか荘厳な教会にでも行っておしゃれに過ごそうと思った。

また、夏休みをとっていないので、年始も休みをとり長期旅行にすることに決めた。イタリアの後、エジプトとイスラエルを旅行をしようと青写真を描く。最終的に、アリタリア航空で、ローマに入り、エジプトのカイロから帰る航空券を手配した。10月10日のことである。

さて、私は飛行機に乗るとき、航空券を手配してもらう旅行代理店に、あえて車イスであることを言わない。なぜなら、以前に車イス一人での搭乗を渋られたり、揉めたりした経験があるのと。別に、飛行機に乗る上で特別なサービスが必要ないからだ。ただ、座席の間の通路が狭いので自分の車イスは通らないのでアイルチェアー(廊下椅子)という幅の狭い機内用の車イスを用意してもらって(空港か機内にある)搭乗の際に、それに乗り換えて自分の座席に行くことだけだ。

現に、仕事で東京出張行くときなんて、事前連絡なしにカウンターで一声かけるだけで簡単に乗っている。

アイルチェアーを用意してもらうことなど、介助という程のことではないと考える。それに、スカイチェアーを用意してもらわなくても座れる席はある。ドアの近くや2列目。ドアの近くなら、誰の介助も要らなくて、一人で乗れる。

もし仮に、車イスであることを前もって伝えていなく、それが原因で介助が受けれない(スカイチェアーの用意だけです)のなら仕方がない。言わなかった自分が悪いのでサービスを受けれなくてもいいと思う。

また、アイルチェアーのない飛行場やボーディングゲートのない階段昇降の飛行場は、世界中にたくさん存在して、だからといって乗れないことはなかった。そのときは人力で手伝ってもらえばいい。乗務員が拒否するなら、乗客に助けてもらう。いずれにせよ誰かの手助けはいる。だから、つらいけど私は障害者なのだ。

ちなみにトイレには機内では行きません。自分の座席で済ませる。小さい容器にとる。大きいのが来たら終りですので、いつも体調管理に気を使っている。

今回の場合、チケット料金を払いに来た私を見て、旅行代理店の人がアリタリア航空に乗客(私)が車イスであることを言った。旅行代理店の人の判断でだ。チケット申し込みから3日後、私の障害の程度をもう少し詳しく聞きたいと旅行代理店から連絡が入った。

私は歩くことができないという、アリアタリアの規定による3段階の障害の分類中2番目に当てはまった。その旨、旅行代理店の人はアリタリア航空に返答した。

そして、1ヶ月経った。アリタリア航空から返事が来た。

・本当に、誰か同乗者はいないのか?

一人では乗ってはいけないとは言えないので、こういう言い方をするのだろう。

 

・自分で歩くことが出来ないのなら介助サービスはできない。

私は一度も、○○をして欲しいなんて言っていない。むしろサービスなんて要らない。自分でする。ただ、乗るときにアイルチェアーを用意してくれたらいいだけである。

 

・トイレはどうするのか?

小は座席でするので何も心配ない。大はしないように体調管理する。 毛布やジャンパーで隠して、バレないようにこっそり容器に取っている。医療器具は使用しない自力排尿。隣が席を外したときや、寝ているときなど、隣の迷惑にならないように、するタイミングは計らう。今までに、周囲から苦情を言われたことは一度もないし、気づかれたこともない。

 

・座席でトイレをしてはいけない。

そりゃ、普通にトイレに行ければ良いが、トイレに行けないから、座席でするだけである。

毎度毎度フライトアテンダントがアイルチェアーをもってきてトイレに連れていってもらうのは大変。忙しいときなどは、手助けはしてもらえないため、行きたいときにトイレに行きづらい。座席で尿をとることは最善ではないが、最も効率的な解決策である。互いの手間が省ける。

説明しても航空会社は認めづらいだろうから、以降、チェックインのときは、「機内ではトイレには行かない」と伝え、実はこっそりしている。柔軟な受け答えということで許して欲しい。

 

・乗れるか、乗れないかは、最終的に当日のフライトキャプテンが決定する。

そんな無責任な。当日、NO と言われたらどうするのだ? 私の時間を返せ! 百歩譲って、乗れないのなら乗れないで結構。それも言ってくれないとは不親切を通りこして呆れる。

実際、困ると言われても、飛行場で搭乗拒否にあったことはないのだが不安要素が、1%でもあったら乗るわけにはいかない。結局、キャンセルした。それが11月中旬。年末の飛行機は満杯になってしまった。10月の段階で乗れないといってくれたら(それも腹が立つが)、もっと対応ができたのに。

アリタリア航空は、私がどんなサービスを望むかを聞いてもくれず、歩けないというだけで単独で飛行機には乗せてくれない(正確にいうと当日決定する)。何の心配も、迷惑もかけないと思うのに聞いてもくれない。極端な話、サービスが何にもなくてもいいのに。乗ることができればいい。

ちなみに、今まで私は、25の航空会社・57の飛行場 (2001年4月現在) を利用したことがあります。どんな田舎の小さい空港、小さい小型機でも乗れなかったことはなかったです。設備がなくても助けてくれたりしました。

ある人はいう。別に車イスの人間を乗せてくれなくてもいい。他にも航空会社はあるから、サービスが違ってもいいじゃないか。われわれが、そういう航空会社を選択しなきゃいいんだ。

とはいっても公共機関なんですがね。欲しいサービスがあればリクエストして対応してもらう。リクエストがなければ航空会社はサービスを拒否してもいいと思う。

リクエストを聞かないで一方的に搭乗を断られるのはどうかと思う。

男性や女性との違い、白人と黒人との違い、子どもと大人の違い、なのと同じレベルで障害があるのとないのとが、考えられて欲しいものだ。


■友人の報告

11月上旬に、友人女性3人が、アリタリア航空でイタリア旅行に行った。その話を聞いたら、飛行機だけが最悪だったという。

飛行機はオンボロ。これは値段が安いから許そう。サービスが最悪。 食事以外のときは、フライトアテンダントは全く出てこなかったという。飲み物が欲しいときや何か頼み事があるときは、わざわざ乗客が出向いてカーテンを開けてフライトアテンダントを呼び出さないといけなかったそうだ。行きも帰りもそうだったという。

また、別の友人は、職業道具である楽器を機内に持ち込むのでフライトアテンダントに汚い言葉をいわれて大喧嘩になったというのを聞いた。他にも、何人かのイタリア人から良くない評判を聞く。

別に、車イスの人間やから特別扱いしろと言っているのでなく、一人の乗客として、自由に楽しく快適に移動を提供してくれればいいんですが、車イスの人間だけでなく、他の人にもサービスは悪いようです。乗客へのサービスという点では同じことです。


■羽田空港にて

出張で、羽田から伊丹に行く飛行機に乗ろうとしたとき、私の他に、もう一人、車イスの人がいた。出発時間が押していることが原因なのか、なぜかその人は吠えていた。

「わしは障害者やぞ! はよ、案内せんかい!」

見てて悲しくなりました。私は静観するだけ。その人は立つこともできるのですが、障害って、心の障害なのかな?

障害者に歪んだ(すれた)性格の人が多いのは事実です。私もある面、すごいすれています。あと親御さんや、介護人とかが強くいうこともありますね。本人はそうでもないのに。社会がそうさせるのか、そういう人が多いから社会がそうなるのかわかりませんが、お互いが歩み寄らないといけないと思います。どうも、日本社会は極端で、やるときは馬鹿丁寧で、やらないときは何もしない。

障害者の方もやってもらうのが当たり前でなく、自らが努力して歩みよることも必要です。何か不自由があるから障害者なんですけど、少なくとも精神的には歩み寄って欲しい。どちらか一方が近寄るのでなく、双方が近寄れればいいですね。

・・・

私は都合のいいときだけ自分の障害を持ち出していることがあるかもしれませんが、障害を理由に何か自己主張することはあまりありません。ただ人としての自己実現のための要求をしているだけです。これは、障害があろうとなかろうと関係のないことです。人権です。

だからこそ、障害を理由に行動を制限することもなく日本中、世界中に行っています。それでも、歩けないという障害があり、どうしても人の助けがいることがあるので、そのときは、仕方なく、お手伝いを頼みます。そんなの気軽に頼めばいいじゃないかと思うかもしれませんが、なんというか日本は、気軽に言い合える雰囲気でなく、殺伐とした社会なんですよ。逆に、私が困っている人を助けることも多くあります。

また、私は「障害者」という言葉を自分自身では使いません。何か配慮を頼むときや、問い合わせをするときには、「車イス」っていいます。なんか、いい呼び方ってないですかねー。

さらに、「障害者」に対する「健常者」って呼び方も嫌いです。 私だって、健康が常ですよ。風邪を引いて学校や会社は休みませんし、普通に仕事して遊んで生活送ってます。

そもそも「健常者」「障害者」って分けること自体、間違っていると思います。誰もが、年を取れば不自由になるし、妊娠したり、幼い子どもがいたり、心が病んだり、はては、お金がなかったら不自由もしますし、誰もが障害者に成り得ると思います。


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