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米国留学 報告書
(4)
 

2002/09 - 2003/08

補助技術ITの活用


洞穴という名の静かな空間

バークレーのキャンパスはとても広いです。そして山の斜面なので坂。アシスティッブ・テクノロジー・センター(通称:CAVE)に行くのには、斜面のないルートを使う。大学の象徴である門(サザーゲート)の前は、いつも学生でにぎわっています。

キャンパスには、車イスに乗る学生も日常の風景として、普通に毎日どこかで見ることができます。山の斜面にあるので、電動車イスの学生がほとんどです。門をくぐり抜けサザーゲートを抜け、歩くこと5分。Moffitt Undergraduate Library に、CAVEはあります。 DSPのある場所とは別になります。

 

学部生の図書館ですが、入口横にあるカフェがすごいおしゃれです。緑に囲まれたテラス席からは、キャンパスを見下ろせます。なんと静かな空間なんでしょう。ここで飲むコーヒーは、キャンパスで一番です。訪問の際は、ここでの休憩をお忘れなく。

CAVEは、そのMoffitt Undergraduate Library の2階に、ひっそりとあります。入口はアクセスカードによるセキュリティ管理がなされ、登録しないと入れないようになっています。管理者のアダムが、誰がいつ入ったのか、いつ出ていたったのか、コンピューターで一覧できます。つまり学生の利用状況もわかるってことです。素晴らしい管理方法ですね。

利用希望者や、利用が必要とされる者は、インストラクションが行われ、スペシャリストが、その学生が必要なものを聞き、何が問題か、どの補助技術が有効か判断します。使用が認可され、アクセスカードが渡されると、CAVEに自由に出入りができます。CAVEには、責任者のアダムか、アシスタントの誰か1人が基本的に常駐することになっています。スタッフがいるときは、学生はコンピューターの使い方やソフトの使い方の説明を求めたりします。

現在、約80名のDSPの学生がCAVEを利用しています。そのうち約20名が、レギュラー的に利用をしているということです。色んな障害をもつ人が利用可能なアクセシブル・ワークステーションだと、アダムは言っています。静かな環境で、スタッフがサポートし、高速インターネット、プリンタが使えます。ソフトウエアの使い方を学び、自宅でパソコンを使う学生も多いそうですが、授業の合間や集中して作業をしたいとき、グループワークをしたいときなどに、利用されているようです。

最大グループは、LD(学習障害)の学生たち。次にRSI(反復性緊張障害)、そしてBlind(視覚障害)。LDは学生数が多いからです。割合でいくとBlind学生の利用率がやはり高いとのこと。CAVEの予算は、TRIOと大学から半分ずつ出ているとのこと。

コンピューターの置いてある部屋は全部で8つ。それぞれに特徴のある部屋になっています。学生は、予約せずに、利用するそうです。予約者は当然、部屋を利用する優先権が与えられます。また、特定の障害により、その部屋のパソコンが必要な場合は、柔軟に部屋を替わります。

学生の中には、コンピューターを使わない人もいます。音声テキストを聴く人。読み込みソフトを使って聴く人。テキストを拡大表示してみるなどです。パソコンを必ず使わなければならないというルールはなく、作業をするならOKとのこと。どこの部屋で作業しても、学生のファイルは、それぞれがサーバーに保存します。便利ですね。

上のパソコン机の右にハンドルがついています。これは机の高さが変わるものです。アクセシブルですね。ヘッドホンとマイクは、音声認識ソフトを使用するときのものです。マウス操作を用意にする、トラックボードも、CAVEの中には用意されています。スクリーンの文字を音声で読み上げてくれるソフトもあります。

他には、キーボードカバー。タイプするのを手助けするもの。スイッチ類が簡単になったもの。省略単語の使用により、タイプする回数を少なくするプログラムなど、肢体不自由の学生に対し、タイピングを助ける器具がたくさんあります。

こちらは、拡大モニターです。倍率を調整して使います。ただ拡大するだけでなく、色の濃淡をつけたり、強調したりする機能があります。

スクリーンの文字が点字になって、でてくる機械です。DSPの視覚障害スペシャリスト、ジムは自分のパソコンにこの機械をつけています。

これは、点字タイプライターと、点字印刷機です。CAVEは、もともと視覚障害の学生施設から発展したものなので、視覚障害の器具が充実しています。4トラックテープ(再生スピード調整が可能な、1つのテープで4つ録音できるテープ)も、あります。

・・・・・

CAVEでは、毎セメスター後に、利用者にアンケートをとっています。その内容を反映し、設備やシステムの改善をしています。学生のフィードバックをきっちりしています。学生が集まり、お互いに質問をしたり、お互いの補助技術による解決方法を話し合ったり、CAVEは、障害を持つ学生の交流の場という一側面もあります。同じような人の意見は参考になりますもんね。

問題点としては、スタッフが少ないことがあげられました。テキストを高性能スキャニングしてデジタル化する人が、1週間に10時間しかいないので、慢性的にテキストのデジタル化が追いつかないとのことです。また、大学の他のテクノロジーセンター(巨大組織で、多数あります)との、つながりがなく、独立してCAVEがあることです。ネットワーク化や、共有化が必要だとも、アダムは言ってました。

CAVEの利用者は、LD(学習障害)という日本では馴染みのない学生が多く利用しています。例えていうなら、本を読むのは苦手なので、音声化して聞くことで学習するというものです。私も実は本を読むのが苦手で、すぐ寝てしまったり、集中力が切れます。補助技術を有効に使って、音声化して聞くことで勉強の効率が私にとっても上がるかもしれません。選択肢を増やす意味で、補助技術をもっと利用していったらいいですね。


IT化

CforAT(Center for Accessible Technology)という地域の取り組みを取材しました。障害を持つ人が、コンピューターを使ってより暮らしやすくするために情報や技術を紹介したり、教室を開いたりしているNPOです。

多くの日本人も訪問しにきているとのこと。コンピューター関係、政府機関、障害を持つ親たちなどです。どこかの旅行会社が福祉見学ツアーのオプションとしてツアーに組み込んでいると推測します。この組織の運営は寄付金が主たる財源ですが、日本の見学者で寄付をしていったのは1組だそうです。私も寄付してませんね。はい。その代わり広く世間に紹介するということで勘弁を。

いざ、訪問してみると、場所がわかりにくい。倉庫街の中の一部屋を改造して、事務所はあります。周りにはデザイナーのSOHOがありますが、決して治安のよいところではありません。殺風景なところ。街の真ん中に事務所を構えるなんてのは難しいですね。やはり。

CforAT には12人のスタッフがいます。その活動は、まず障害を持つ人のコンピューターアクセス技術の展示の場が第一にあげられます。各企業とパイプがあり、最新技術や障害に応じた道具が展示、紹介されています。それらは各企業から寄付されるとのことです。企業は宣伝の場になるというメリットがあります。多くの見学者が、CforATを訪れ、障害を持った人に対する技術対応を勉強していきます。

次に、教室です。子ども達にパソコンを教えたり、障害に応じた技術を教えたりしています。障害をもつ人にどんな技術があっているのかを指導するコンサルティングもしています。また、地域の学校へ出張して、障害を持つ生徒にパソコンの指導もしています。

子ども達の授業風景を見学しました。 LD(学習障害)のある子ども達ですが、特に証明など必要なく、勉強したい人が口コミで集まってくるとのこと。

簡易キーボードです。紙を入れ替えて使います。それぞれにバーコードがつけられていてパソコンが認識します。パソコンの初心者や、LD、高齢者などへの対応です。同時に、タイプしてスペースを押すと(単語の確定)、単語を音読してくれます。これは英語を話さない人の英語教育にも最適だと思いました。障害を持った人用の技術を一般にもリソースできる事例でしょう。

子どもたちが、タイピングの勉強をしています。いろいろな技術があることも学んでいます。トラックボード(マウスを動かさずに操作できるもの)、ジョイスティック、ヘッドマウス(頭で動かす)、色んなキーボード(片手用、大きなボタン、文字認識しやすいもの)、よく使う単語を簡易登録しているソフト、音声認識ソフト、遊びながら学んでいます。

この日は、授業の最終日でした。嵐だったので(この日の晩、私のアパートを含む36万世帯が停電)、6名のうち4名の出席でした。修了書をもらって、記念撮影です。 よく出来ました。 パチパチ。

 
※オフィシャルサイト Center for Accessible Technology


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