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米国留学 報告書(12)
 
2002/
09 - 2003/08

AHEAD 高等教育と障害者 国際会議


お祭り

米国には、AHEAD ( Association on Higher Education And Disability ) 高等教育と障害者 協会という組織があり、障害を持つ人の高等教育支援に対し、情報収集、発信、交換を促進している。その主要な活動の一つに、毎年の夏に開かれる国際会議がある。2003年の開催地は、テキサス州ダラスであった。ホテルを借り切っての5日間。会議や勉強会、パーティ、様々なイベントがあった。

参加者は、約400名。ほとんどが、大学の障害を持つ学生への学習環境を提供する部署で働く専門家、担当者。学生もちらほらいる。もちろん障害を持つ人自身(大学職員)も参加。女性が7割と多いのも特徴。欧州など、海外からの参加者も少ないけど数名いた。

会議が終わって、夕食は、ホテルに隣接する歴史あるダラスの鉄道駅の2階ホールでレセプション。ただ会議をするだけでなく、参加者同士が交流できる仕掛けがたくさんあるのが素晴らしい。米国なので、料理はあまりおいしくないが、わいわいとビュッフェを楽しむ。初めての参加で、英語だし、私はちょっと緊張気味。あたりさわりのない会話を軽くする程度しかできないし、まあそれで十分。

 

日本人参加者は、私以外に3名いた。臨床心理が専門の方々で、日本のADHD(注意欠陥多動性障害)の学生事情を発表していた。日本人が、会議で発表するなんて、とても素晴らしいこと。 

しかし、この3名の方は、日本のAHEADである、JAHED(日本障害者高等教育支援センター)を存じていなかった。日本では、まだ関係者の情報交換が始まったばかり。もっと多くの人にその集まりを知ってもらわなければならない私が日本でも、今年で3回目ですが、関係者が集まって意見交換、勉強する会があると教えた。ぜひ、日本の会議でも、日本の大学でも学習障害やADHDに対して調査していたり、その取り組みが始まっていることを発表してもらいたいものです。

会議参加者を楽しませるものの一つに、サイレント・オークションがあった。紙に書いてある金額以上の金額を書き込んでいって、落札するもの。収益金は寄付にまわされる。開催地ダラスゆかりのもの、参加者が持ちよったもの、いろんなアイテムが百花繚乱。

会議最終夜は、名物のレセプション・パーティ。数百名の参加者。こんなに大きなホールは日本でみたことがない。舞台は、デジタルビデオで写され、その様子がスクリーンに。各種表彰や、記念講演、1年間のAHEAD活動のまとめなど、豪華な式典。それを、大変おいしいテキサスのBBQ料理を味わいながら楽しみました。

単に勉強するだけでなく、会議もエンターテイメントされているのが米国らしかった。4日間に渡り、100以上ある分科会も、多岐にわたるジャンル。そしてきっちり評価が発表者にフィードバックされていました。

毎年、広い国土の米国の違う都市で開かれる国際会議。既に、2004年はマイアミ、2005年はミルウォーキー、2006年はサンディエゴと決まっている。参加者は単に自分の専門分野の勉強や人的交流をしにくるだけでなく、観光も楽しんでいる。いろんな仕掛けが満載の国際会議です。日本の関係者もぜひ一度ご体験ください。


 日本の大学における ADHDのある大学生への支援

AHEAD 2003 Dallas in Texas,  July 11th  9:45am-10:45am,  Concurrent Block 6 Reunion Ballroom B 

高橋知音  信州大学 教育学部
篠田晴男  立正大学 心理学部
篠田直子  筑波大学 医療技術短期大学部

  
1. 概要

現在のところ、日本においてADHDのある大学生への支援を組織的に行っている大学はない。しかし、調査の結果、注意の問題を抱えている学生は確かに存在し、なかには学習面、心理面で困難を感じているものもいる。本報告では、まず日本におけるLD、ADHD、高機能自閉症への教育サービスについて、簡単にまとめる。続いて、注意の問題に関する大学での調査結果について報告し、最後に実際に困難を抱える学生への支援について、注意すべき点や困難点をまとめる。

  
2. 特別な支援ニーズのある者への教育サービス

2001年に文部科学省は特殊教育から特別支援教育へと名称の変更を行い、ADHD、高機能自閉症、LDが支援の対象となった。2003年にまとめられた報告書では、高等教育におけるADHD、HFPDD、LDへの支援について、大学教職員が理解を深める必要があるということ、支援のあり方についての研究が必要であるということが示された。

  
3. 注意の問題を抱える大学生は支援を必要としているか?

成人でADHDの診断を行うのは容易ではない。そこで、ADHDに見られるような注意の問題の有無を調べる質問紙を開発した。この質問紙の得点と、心理的問題を測定する質問紙の間には相関が見られたことから、注意の問題を抱える者はなんらかの心理的問題も抱えている可能性があることが示唆された。さらに、質問紙で高得点を示した大学生に面接調査を行った結果、一部の学生は学生生活への適応の問題を抱えていることが示された。

  
4. 注意の問題を抱えている学生への支援

質問紙で高得点を示した学生、実際に医師からADHDとの診断を受けた学生の支援を行った。提供された支援としては、進路相談、学習相談、情緒面の問題の相談、社会的スキルの訓練、時間管理のスキル、計画性を養うことなどであった。援助の過程では、学生の関係者が問題を理解することが重要であり、複数の援助者がチームとして、情報交換を密に行いながら援助を行うことが有効である。一方、周囲が問題の性質を理解しないと、情緒的問題をより深刻にする可能性がある。

 
5. おわりに

現在のところ、日本の大学でADHDやLDの専門の支援部門を設置するのは、人的資源の不足、診断が容易でないなどの問題から困難と思われる。より一般的な学習支援、精神保健支援を充実させるとともに、これらの特別支援提供者がADHDやLDといった障害の特徴を理解し、疑いのある学生には必要なアセスメントを実施して、
問題に応じた適切な支援のあり方を検討していく必要があろう。

発表内容の展示会場で懇談する高橋さんと私 日本と米国の違いを説明するために発言する私

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