■早朝の電話
朝7:30、ホテルの部屋の電話が鳴った。 「今日のあなたの予定は?」と聞いてくる。
「バールベックに行こうと思っている」と寝ぼけながら答える。
スペシャルプライスで50ドルいうので、45ドルまけてもらい、実に簡単に1分もかからず交渉成立。
どこの誰かもわからない人からの電話だけど、安いからいいかと思って電話を切った。
レバノンに来た一番の目的は、バールベックの遺跡を訪れることだった。
当初の予定では、タクシー借りきりは距離があるので高いだろうから、バスで行こうと思ってた。
だが、ホテルから、郊外のバス乗り場まで行くのは大変だと来てから直感した。
バスも大型バスなので車イスの私が乗るのには困難だと感じていた。
だから、朝早くの訳のわからない勧誘の電話は渡りに船だったのだ。
ちんけな朝食後(ホテル宿泊の際、値引きをしてくれなかったので朝食をつけてもらっていた)
ロビーに降りると、フロントの人は私がバールベックに行くのを知っていた。
電話の主は、ホテルの従業員(名はトニー)だったのだ。運転手は彼の友達がするとのこと。
運転手の名はハリー。トニーとは、ベネズエラで知り合ったらしく親友だ。
彼は、年間のほとんどを海外に出稼ぎに行っているらしい。
オーストラリア、チリ、ベネズエラ、スペイン、ドイツ、etc 世界各国で働いた経験があるので
英語も話せる。めちゃくちゃなスペイン語も話せる。
軍隊にも所属した経験があり、根性も座っていて力も強く、私を担ぐのも簡単にしてくれる。
現在は休暇で、レバノンに戻ってきていて、小遣い稼ぎでタクシー運転手をしているようだ。
本職のドライバーでないので料金も安いのだろう。

■バールベック
ベッカー高原の中央に位置するバールベックへは、首都ベイルートから車で約2時間半。
雪を頂く2つの山脈に挟まれたベッカー高原は、レバノンの穀倉地帯である。
そのベッカー高原南部のシリアとイスラエルの国境地域は、紛争地域で有名なゴラン高原であるが、
ニュースによく出てくるゴラン高原がどうしてそんなに争われるのかというと
ベッカー高原と同じく、中東の中で数少ない肥沃な大地であるからなのだ。
さて、バールベックに行く途中、運転手のハリーは道端でベッカー高原名物「そら豆」を購入した。
車の中で私も、「そら豆」をぼりぼりと食べたが、めちゃくちゃうまかった。
中東一といわれるレバノン料理は、このベッカー高原の野菜に支えられているといっても過言ではない。
ちなみに、レバノンは、アラブの中で唯一砂漠のない国である。
肥沃な緑豊かな国土と温暖な気候は、私の中東の固定観念イメージを見事に覆してくれた。

遺跡につきました。有名な天にも突き刺す六本の大列柱が見えます。
掘り込まれたレリーフの細かさには目を見張ります。

バールベック遺跡は規模としては大きくないのですが、保存状態がよいローマ遺跡として有名です。
ローマ遺跡の穴場だという人もいます。
上の写真のバッカス神殿は、アテネのパルテノン神殿よりも完全な形で残っているといわれます。
さて、車イスの私は、正面入口は長い階段なので、出口の段差のないところから入場しました。
入場料はもちろん無料でした。 ← ヨルダン・シリア・レバノンでは、どこでも車イスは無料です。
ところが、正面の階段を避けて出口から入っても、メインの祭壇のあるところに行くには結局
階段があるので、周りの観光客に頼んで担いでもらって上がりましょう。
せっかく来たのだから、多くの場所を見ないとね。
祭壇の階は平面なので、車イスでもゆっくり全部見ることが出来ました(下の写真)。

ベイルートへの帰り道、運転手のハリーは、同じ道を戻るのは楽しくないからと
わざわざ遠回りをして、レバノンの金持ちの避暑地を通ってくれた。
チップを要求するどころか、ご飯や飲み物までおごってくれた心優しいハリーは最高だ。
思わず、翌日のビブロス行きのタクシー借りきりも予約してしまった。

■ビブロス と レバノン杉
次の日も、ハリーとのドライブ。
目的地はビブロス。世界で最も古い都市国家が存在していた。
聖書を意味する「バイブル」は、ここビブロス(Byblos)から来ている。
ビブロスのギリシャ名はパピルス、すなわち書物を表し、アルファベットはこの地で産まれた。

ビブロスは、海に面して街がある。
地中海からの心地よい風が吹き、波の音と鳥のさえずりが気持ちいい。
タンポポや花が咲き乱れていて、旅の疲れも何もかも吹き飛ばしてくれる。
個人的には、バールベックよりビブロスの方がいいです。
遺跡の近くの海岸も静かで落ち着きます。

さて、入口ですが、またもや階段があります。
普通は、復元された騎士の城(上の写真)から入場しますが、車イスでは無理なので
脇の道から城の廻りをぐるっと通って、遺跡の内部に入りました。
もちろん、入場料は無料です。
古代の住居跡や、紀元前14世紀に建てられた神殿跡(下の写真)など、
悠久な時の流れを静かに感じれます。実に環境の良いところです。

ビブロスを見た後、ハリーはレバノン杉を見に行こうと車を走らせた。
これでもかと深い谷間を抜けて、山を登っていくドライブは爽快だ。
だんだんと空気も冷たくなってくる。

一気に標高2000mの地点まできた。
道端には、雪も残っている。冬にはスキーが楽しめ、リフトやスノーモービル、ロッジがある。
日本で例えるなら、上高地みたいだ。
レバノン国旗にもなっているレバノン杉は、かつてレバノン全土を覆っていたが
古代からの伐採がたたり、現在では約1200本にまで減少している。もはや天然記念物ものである。

ところで、レバノン杉を見に行ったのは契約以外のサービスだった。
ハリーは私に、レバノンの素晴らしい自然も見て欲しいと連れて行ってくれたのだ。
とはいっても、ビブロスから片道2時間もかかるので、
35ドルの料金をではガソリン代もままならないので多めに欲しいというので、45ドル払った。
ハリーは心優しく親切で(でも親切すぎて未だ独身)、会話も弾むし、低料金だし、本当に最高だ!
■ジュニエ
またまた、3日目もハリーとドライブだ。
この日の深夜、ベイルートを発つので、深夜のホテル→空港の送迎も含め30jで契約した。
前日の夜、飲みすぎて疲れていたのもあったので、近場のジュニエに行くことにした。
ジュニエは、ベイルートの北20kmにあり、高級住宅街でもある。
ベイルートよりもオシャレな服屋が並び、流行発進地域でもある。
街を歩く女性も非常にオシャレで、洗練されたレバノン美人が多く見られる。
服格好はヨォロッパの街と変わらない。目のやり場に困る女性もたくさん見れる。
すごいセックスアピールに、こちらもタジタジ。
高級車がバンバン走り、オシャレなカフェもあったりして、思わず、芦屋を連想した。
さて、ジュニエの観光名所といえば、テレモートというケーブルカー。
海岸からケーブルカーで、山の上に行きましょう。
乗り場には階段があって大変でしたが、ハリーの手助けで無事、私もテレモートで頂上に行きました。
山の上には、ブラジルのリオデジャネイロにあるキリスト像を模したような白亜の像と教会がある。
日曜には、レバノン中からキリスト教徒がお祈りに来て混み合う。 ここからの景色は最高でした。

■送迎の空港にて
夜、空港に送ってもらうとき、ホテル従業員のトニーと彼の婚約者も一緒に車に乗っていった。
ちょっとしたドライブだった。
空港に着いたとき、トニー(最初に電話でタクシーチャーターを打診してきた人)が
ハリーは親切だったろうし色々行けただろ、しかも良心的な価格で、だから、チップをくれよ
と迫ってきた。 彼のコーディネートで楽しい旅が出来たのは事実でお礼をしてもよいのだが、
契約は契約なので、チップは上げなかった。
だからなのかもしれないが、運転手ハリーと友人トニーとの別れも簡素なものだった。
それでも、本当に楽しかった。
中東旅行は料金交渉さえ気にしなければ、実に面白く安全に旅できるところです。
ハリー、本当にありがとう!!
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