■ Creative Growth Art Center
オークランド市ダウンタウンにある、クリエーティブ・グロース・アートセンターは、1973年の設立。
精神的、身体的、経済的に障害を持つ成人(主に知的に障害を持つ人)に対して、
芸術創造のプログラムや自立のための教育、職業機会を提供しているNPO(非営利組織)。
障害を持つ人に、芸術的な表現/発言を発達させる機会を提供し、表現の可能性を追求している。
また、障害と芸術のかかわりについて興味のある人に対し、調査やトレーニングの機会も提供している。
趣のある外観をもつ建物を入ると、まずギャラリーが飛び込んでくる。
このセンターのアーティスト達が制作した作品が、展示され、販売されている。
エネルギーのある作品ばかりで、その質の高さに驚かされる。センスのいいギャラリーである。
いい作品には、買い手がついている。売却済のシールがあちらこちらで張られているのも納得。
ギャラリー展示は、1年間何かが常に行われている。テーマは2ヶ月に1度変わるとのこと。
アーチストの中には、既に多くの顧客を持つ人がいる。
下の写真下にある、糸をグルグル巻きつけた Judith Scott
の作品は、4500ドルで売られていた。
ニューヨークの現代アートシーンでは、200万円とかで売られ、買い取られている。
彼女の作品は図抜けて高いが、他の作品の値段は、50ドル〜300ドル。
お手頃な価格が、このセンターの特徴でもある。微妙なさじ加減のうまさで作品が売れていく。
作品が売れたら、そのお金は基本的に、センターと製作者、50%ずつの取り分になっている。
展示は、このギャラリーだけにとどまらず、アーティストや作品を紹介するために、
他のギャラリー、美術館、企業のロビー、コミュニティースペースにも展示されることがある。
広く一般に向けて、障害を持ったアーティストの可能性を示すものとなっている。
また、作品を展示販売することは、彼らの収入になるだけでなく、アーティストとしてのプライドをもつ
機会になっている。展示会のオープニングに参加し、いろんな人との交流できるのも楽しい。
作品を購入している顧客は、コレクター、インテリアコーディネーター、病院、だそうです。
■ アートスタジオ
ギャラリーで、作品のレベルの高さに驚いた後、すぐ隣にある制作現場を見学する。
たくさんのアーティストが、それぞれのスタイルで自由に創作活動に取り組んでいる。
近づくと、気軽に話し掛けてきて、作品の説明、制作意図などを語りだす。
パワーのある作品を作る彼らは、きっちりと自分が制作しているものの説明ができるのだ。スゴイ!
この工房での制作は、プロフェッショナル・アートスタジオ・プログラムと呼ばれる。
アート活動を通して自立を目指す障害を持つ人のためのプログラム。
各自の必要に応じて、絵画、陶芸、彫刻、版画、木工などのクラスに参加する。
それぞれに、専門のアーティストが創作活動の環境を整え、彼らをサポートする。
また、創作活動を楽しむだけでなく、ここでの経験を通して彼らが成長していくことを目指している。
スタジオに通うアーティストの移動については、センターは関与していない。
他の地域サービス、NPOなどが、彼らの住居とセンター間の輸送を手伝っている。
毎日来るアーティストもいれば、週に1回の人もいる。興味がなくなってこなくなる人もいる。
このセンターで活動を行うには、リージョナルセンターのソーシャルワーカーが本人の適性、興味、才能
を考慮して判断している。高校生の夏季体験プログラムもある。いずれも人気があり、選抜されている。
スタジオの環境は、とてもいい。作品も販売されるので、質の良い材料が使われていた。
寄付でもらえるころもあるそうだが、ほとんどは購入しているとのこと。
ちなみに建物は寄付され、センター所有になっているので、家賃はかかっていない。
指導するアーティストは、フルタイム、パートタイムのスタッフも混ざり、一日に、6〜7名ほど。
オークランド市教育局からも、美術教師が何名かパートタイムで派遣されている。
いずれも絵が好きで老後に時間ができた、主婦で時間がある、とかといった人ではない。
バリバリ現役のアーティストが指導するからこそ、このセンターのレベルが非常に高いのである。
センターに通うアーティストは、1日38ドル(約5000円)のレッスン代を支払う。
このレッスン代は、オークランド市リージョナルセンターに申請し、市から料金が支払われる。
38ドルという料金は、市の施設評価によって上下変動する。
つまり、意味のある質の高い活動を行っている施設には、多く支払われるようになっている。
センターの一年間の総予算は、約2億円。
50%がレッスン代から、50%弱がギャラリーでの作品販売による売上から。
そのほかの収入源として、メンバーシップ会費、企業や財団からの助成金がある。
メンバーシップ費は、15ドルから、2500ドル以上まで。すべて個人寄付。
特典として、作品購入時の10%ディスカウント、展覧会レセプションパーティーの招待状が送られる。
センターの常勤スタッフは10名ほど。運営、スタジオ、ギャラリー、3つの専門に別れる。
無償ボランティアは年間20名ほどが参加するも、ボランティアを頼りとした運営は全くされていない。
陶芸をしている女性。詩を詠むのが得意で、詩集がギャラリーで販売されている。
彼女は日本の京都にあこがれており、日本語を勉強していた。
クレヨンで作品を作る Raydell Early。
彼のクレヨン箱は、小さいクレヨンが何百も詰まっていて、それを整理、吟味しながら、もくもくと作成。
ギャラリーにあった彼の作品が素晴らしく、私はそれを購入しちゃいました。
これは、ラグ/タペストリー制作現場。
一つ一つ、毛糸がキャンパスに打ち込まれていく。
このプロジェクトは、仕事感覚。デザイン、製作者には、その労働に対し、時給が支払われている。
センターに通う人の収入を得る機会を提供するものとなっている。
ラグ/タペストリーが売れた場合は、15%がデザイナー。85%がセンターの取り分となっている。
木工の工房。家具に絵を書いて新しいものに生まれ変わらせます。
やさしいデザイン、タッチ、色合いが、とてもいいです。子ども部屋、学校、病院などに最適。
この家具を制作している David と記念撮影してきました。
このセンターは、様々な文化、経験、背景を持つ人々が利用しています。
それぞれの障害、個性によって、それぞれに「アート(表現)という言語」が使用されている。
指導する、スタッフ、ボランティアにとっても、センターでの活動は非常に刺激的なものになっている。
センターの自由に表現するアーティストに触れて、強いインスピレーションを与えられた人も多い。
機会があれば、ぜひ訪問して、ギャラリーとスタジオを探検してください。
アーティストやスタッフ、ボランティアと話をすることで、芸術表現の本当の可能性とパワー、
それが、希望、癒し、コミュニティーに対する帰属感を与えることだと感じることでしょう。
全米で、クリエーティブ・グロース・アートセンターのような組織は、30ほどあるとのことです。
ベイエリアでは、サンフランシスコに、クリエーティビティ・エクスプロ−ド。
リッチモンドにNIADアートセンター、という組織があります。
世界にも、同様の活動をしているNPOは、たくさんあるとのこと。
しかし、このセンターはレベルの高さ、販売をビジネスとして成立しているのがスゴイと思います。
※この訪問は、1999年に当地でインターン(研修)していた、アート・コーディネーター 山本雅美さんに
ご協力いただきました。彼女は、日本と米国のアーティストの交流を支援する活動をしています。
彼女と知り合ったのは、オランダ、アムステルダムの美術館なんですよね。旅人友達。
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